「あー…あたしにもできる高収入アルバイトってないかなぁ…」

ふと電話先の友達がつぶやいた。

「なんで?バンドしてるって言ってたじゃん」

彼女は電話先で溜息をつきながら、現状がよくないことを告げた。
「…結構さ、大変なんだよインディーズ。収入にならないよ」

彼女はガールズバンドとしてここ何年か駅前で歌っている。
それなりに知名度はあるようだが、なかなか前進しないようだ。

「っていうかさ、前に私にもできる高収入があった、って、あんた言ってたじゃん。それ思いださなきゃあたしからあんたに電話することなんかなかったよ」

彼女はさらりと言う。
かちん、ときたが、彼女の言うことは分かる。
あたしと彼女は文化祭で別々のバンドに所属し、演奏の順番やステージ上の配置でモメた相手だ。
一応同じ軽音部の仲間として卒業したが、最後の文化祭がモメただけにそれからは連絡を取っていなかった。

「…あたしと同じとこ、紹介しろって言いたいの?」

あれは何年前だっただろうか、私は大学受験に失敗し、お金を使うだけ使った。
仕方ない、と私にもできる高収入アルバイトを探し、結果、今のシンデレラグループで長いこと働いている。
風俗もバイトもはじめてだったが、怖い噂をよく聞く風俗業界で、ここだけは評判の良さしか知らなかった。

「別にあんたと同じとこにいたいわけじゃないよ。系列店っていうの?ない?近くに」
彼女はなにか焦ってるようだった。
あたしは自分のベット脇に置かれたギターを眺めた。

「教えてもいいけど、稼いだらあたしとも組まない?バンド」

彼女が息をのむのが分かった。

それから数カ月、私たちは仕事の傍らでギターを弾いている。